3-20 ゲフィラ・オルの最後
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
ロドとノエラは落下を免れた。が、それは二人の生存を意味しなかった。ロドの呪縛を脱したゲフィラ・オルは二人を敵と見なした。一つの首が二人を諸共に噛み砕いた。
森に悲鳴がこだました。
残った首がアルを狙った。迫る牙をアルはわずかに軌道をずらして避けた。宙を横切る長い首に張りつくと遡り、首が戻る動きさえも味方にして再度中央の首の上に降り立った。光球は空中で解除した。光の剣を出現させると伸長させながら突き立てた。長く伸びた光剣は首を刺し貫いて切っ先を体の外まで現した。ゲフィラ・オルの咆哮が太く、長く尾を引いて響いた。
剣を戻し、次の攻撃に備えたアルの動作は無用だった。ゲフィラ・オルの巨体が揺らぐと二つの首も力を失って倒れ始めた。
「!」
アルは再び光を纏うと地上に向かって飛び降りた。ゲフィラ・オルの体が地響きを立てて崩れ落ちる。下敷きになった木がなぎ倒され、盛大な砂塵が舞った。巨獣との闘いは終わりを告げていた。
「―」
地上に戻ったアルは、離れた場所から倒れたゲフィラ・オルを眺めていた。
求法院にいるはずのない獣だった。おそらくはノエラと呼ばれていた調制士が呼び込んだものだ。
ロドもノエラも利用していたゲフィラ・オルに逆襲された。直接手を下したわけではなくとも、アルは結果として人を殺していた。初めての経験だった。
足を踏み外しそうになったノエラをロドは確かに助けようとしていた。ロドの行為は、闘いの前にリアの顔を思い浮かべたアルと同じものだった。
少し、胸が痛んだ。