3-17 転送の相転儀
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
アルの耳にくぐもって聞こえた音があった。何か大きな物が遠くで倒れる音だった。
ギーツの方も!
状況を一瞬で把握したアルは反撃に移った。今度はアルが相手の隙を突く番だった。再び光を纏うと、慄く二つの首の間を抜けて地を走り、勢いを利用して上に飛んだ。目指したのはゲフィラ・オルの操り手だった。
「!?」
宙を飛ぶアルを斜め上方から影が襲った。影の圧力はアルを後退させた。アルは空中で軌道を修正すると影を避けて地面に戻った。空を切った影が地を叩く。巨大な打撃音がし、砂塵が舞い上がった。ゲフィラ・オルの前脚だった。鉤爪は地面を抉って巨大な溝を作った。甚大な破壊力だった。
ゲフィラ・オルが体勢を立て直し、アルは再び逃走する立場に押し戻された。
「!」
危機を感じたアルは横に回避した。
先刻までいた場所に木が落ちてきた。逃げ込もうとしていた森との間にある空間だった。
逃走しながら相手を盗み見ると、ゲフィラ・オルの爪が木を薙ぎ倒していた。根元で折られた木はゲフィラ・オルにも倒れかかり、頭の上にいる調制士が触れると姿を消した。
「!?」
当惑と同時にアルは上空からのプレッシャーを感じた。回避行動を取ると今度は続けざまに木が降ってきた。
転送の相転儀!?
話でしか聞いたことのない力だった。守勢に廻ったアルにそれ以上考える余裕はなかった。木の合間をすり抜ける間にもゲフィラ・オルが背後から迫った。落ちてきた木と森に立つ木が絡まり不穏な音を立てた。一部は間をすり抜けてアルの行く手を邪魔した。