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3-12 二人の合図
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「気を使ってくれるのは嬉しいが、だったら、霊想廟でもいいんじゃないか?」
「闘いになったら壊しちゃうかもしれないから」
「求法院には腕の立つ修復師がいるさ」
修復師は工房にいる求法院のスタッフだ。相転儀の力で物体を修復する技を持つ。襲撃で壊れたリアの部屋も、午前の戦闘で破壊された宿泊棟も修復師のおかげで元に戻った。
「それでも嫌なんだ」
ギーツが苦笑を深くした。
「アルは優しいな。まあ、魔族は心に従う生き物だ。これ以上は言うまい。ヤバくなったら、合図しろ。すぐに駆けつける」
「ギーツが襲われた時は?」
「おれも合図する。そうだな…。何かぶっ倒れたような大きな音がしたら来てくれ」
「じゃあ、ぼくは光の球を打ち上げるよ」
「分かった。気をつけろよ」
「ギーツもね」
ギーツが頷き、二人は森に入るとそれぞれの道を辿り始めた。