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3-11 三つの建物
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「うん。やろう」
確かな声とともにギーツを見上げた。
「決断が早くて結構だ。優秀な者の特質だな」
ギーツは笑うと森を見上げた。
「この森の中には三つの建物があるそうだ。正確には、右に位置する建物は破壊されたままでいまだに修復されていないって話だ。中央の奥側には霊想廟、左には美術品や工芸品を展示した建物がある」
「霊想廟って何?」
「おれも詳しくは知らないが、霊感を得るための場所らしい。求法院の人たちもたまに使うらしいな」
ギーツの説明を聞いたアルは森に目をやった。風で樹の梢がかすかに揺れている。求法院の敷地にいる安心感からか、塀の外の森とは受ける印象が違っていた。
「おれが言い出したことだからな。どこに行くかはアルが最初に決めろよ」
「じゃあ、ぼくは廃墟の方に行ってみるよ」
アルが言うとギーツは奇妙そうな顔をした。
「何でまた、面白くもなさそうなところを選ぶ?」
「だって、ギーツは美しい物を見たいだろ?」
ギーツが苦笑した。