3-10 策
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
食堂の裏手を過ぎ、離れた場所まで来たところでギーツが立ち止まった。アルも合わせて足を止める。二人の眼前には敷地の中とは思えないほどの鬱蒼とした森があった。
「すまんな、アル。こんなところまで引っ張りだして。リアとナヤカは知らない方がいいと思ったんでな」
「?」
「おれに案があると言ったのは本当だ。策を仕掛ける」
アルは黙ってギーツを見上げた。
「クズをまともに構っても消耗するだけだ。相手がクズなら、こっちもそれなりの対処をしないとな」
「…どうするの?」
細い声でアルが訊いた。消極的な賛同だった。
「ここで二手に分かれる」
「危険だよ!」
「だからいいのさ」
不穏な雰囲気を漂わせてギーツはアルの顔を覗き込んだ。
「向こうが卑劣だってのはもう分かってる。だったら、あえて隙を作って呼び込めばいい。簡単な話さ。今だっておれたちが気づいていないだけで、きっと様子を伺ってる。間違いない」
アルはつかの間、逡巡した。単独での行動は本来なら避けるべきだった。ギーツのやり方は状況のバランスを自ら崩す危ない選択だ。確かに単純で、微妙な話だった。リアが聞いたら反対したかもしれない。
脳裏にリアの面影が浮かんだ瞬間にアルは決断していた。