3-9 今度はこっちから
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
とりあえずの覚悟はいいようね。
リアはアルの状態を推し量った。
「それで対処の方法だけど…。どうする気? まさか、このまま敵の出方を待つなんて言わないわよね?」
「それはもう散々やったからな。今度はこちらから動く」
「どうするのよ?」
「おれに案がある。アル、少し歩かないか?」
「え? いいけど…。ここじゃ駄目なの?」
「ちょっと微妙な話なんだよ。―アルを借りるぜ?」
「構わないけど…。何考えてるのよ?」
リアは不審げな表情をした。
「なあに。話自体は簡単さ。そう嫌がるなよ。すぐに返すからさ」
「離れるのが嫌だなんて言ってないじゃないっ!」
からかわれたリアは顔を赤くした。ギーツは喉を鳴らして笑うと建物の向こう側を指差した。
「せっかくだから、裏手にある森に行ってみよう。入ったところに施設がいくつかあるらしい」
「あんた、まさか求法院見学がしたいだけじゃないでしょうね?」
「いやいや。あくまでもついでさ」
ギーツは穏やかな表情を崩さず、リアは疑わしげな視線を向けていたが、息を抜くとアルに顔を向けた。
「気をつけてね、アル」
アルが頷く。ギーツは表情を引き締めるとナヤカに言った。
「おまえは極力リアと一緒にいろ。細かい判断は任せる」
「分かりました」
ナヤカがいつもの無表情で答え、ギーツとアルは森に向かって歩き出した。
リアとナヤカは、二人の後ろ姿を椅子に座って見送っていた。