3-7 宣始式は宣死式
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「魔族らしいやり口ね」
「だろ?」
楽しそうにギーツは笑った。
「そんなに楽しそうにしないでよ。今まさにトラブルに遭ってるのはぼくたちなんだよ!?」
「そう言われてもなあ。実際、楽しいものはどうにもならんな」
アルを見やるギーツの顔は笑ったままだ。
「どこが楽しいのっ!?」
アルの言葉は悲鳴のようだった。
「ようやく血の一年らしくなってきたじゃないか」
「まるで待ち望んでたみたいに聞こえるわよ?」
「待ち望んでいたのさ。宣始式は宣死式ってな。おまえさんも聞いたことがあるだろ? まさか、最終試練まで何事もなく過ごせるなんて思っちゃいまい」
リアは刮目した。ギーツのことはずっと魔族らしくないと思ってきたし、今もそれは変わらないが、やはりこの男も魔族なのだ。生死のかかった状況を楽しんでいる。
続いてリアはナヤカを眺めた。口を閉ざし、視線を伏せ気味にして座っている。見た目には何の感情の表出も見られない。ギーツの不穏な言葉に何の感慨も抱いていないかのようだった。
…取り立てて騒ぐようなことではない、って感じね。
リアは快活に笑った。
「あんたたちがいいなら、こっちもいいわ。やってやりましょう」
「決まりだな」
ギーツとリアの間で合意が成立した。リアはアルに顔を向けた。
「アルもいいわね?」
「みんながいいなら…。だけど、二人の話を聞いてると、これが普通みたいに聞こえるんだけど」
「その通りよ」
リアは明快に答えた。
「今まで王選びがまともに進行したためしはないっていうしな」
ギーツが最後の一押しをし、アルの顔は大きく歪んだ。