3-2 ナヤカの異名を知る者
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
ギーツが微笑った。
「視野が狭まってるぜ、調制士殿。人は苦しい時ほど心持ちは楽にしておかないとな。事態を把握し損ねる」
「分かってるわよ、それぐらい」
不服そうな表情をリアはした。常日頃心がけている事柄の一つだったからだ。
「なら、ひとまずおまえさんの説は引っ込めな。意地を張る必要もないだろ?」
リアは息を抜いた。分の悪さを素直に認めていた。その代わり、気持ちは楽になった。求法院との全面戦争は避けられそうだった。
「…じゃあ、誰だろ?」
アルが呟いた。四人の疑問を代弁した言葉だった。
「…分からんな。だが、おれはナヤカの異名を知っているやつだと思ってる」
「どうして?」
「リアが最初に狙われたからだ」
目線を寄こしたギーツに、リアは凶悪さを滲ませた笑みを向けた。
「あたしが一番弱いって思われたわけだ。…ナメられたものね」
「そう怒りなさんな。敵はおまえさんを弱いと考えたわけじゃない。ナヤカを恐れたんだ」
「同じことよ」
リアはナヤカを見やった。全員の目がナヤカに集まった。
ナヤカの異名を知っている…。それは、誰だ?