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2-29 恐ろしい想像
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
途中で文礼室の前を通りがかった。
「結局、教えてもらえなかったね」
アルが言った。リアも窓口を見やる。
「しょうがないわ。まさか力ずくってわけにもいかないし」
アルが口にしたのは戦闘に加わっていた文礼員のことだった。捕縛された胞奇子と調制士について詰所でリアが尋ねても調査中を理由に名前さえ教えてはもらえなかった。戦闘の抗議かたがた聞き込みにいった文礼室でも文礼員のことは分からなかった。わずかにシャスカ・アレストという名前と所在が不明となっている事実が判明しただけだ。真相を追及するリアの声は『後日の報告』の一言でかき消されていた。
きっと、永遠に来ない『後日』に違いない。
自室での襲撃をリアは思い出していた。求法院の対応の素っ気なさは見事なものだ。
もし、求法院が主導してるなら来るわけないけど―
軽い気持ちで思い浮かべた言葉にリアは足を止めた。
…求法院が、…主導?
恐ろしい想像に突き当たっていた。