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2-28 スティアータとバルキッサ
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
リアが治癒室から出るとアルが待っていた。向かいのベンチから立ち上がると名を呼んだ。
「どうだった?」
「平気よ。何ともないって」
リアは左の手首を振ってみせた。
宿泊棟での騒動の後、二人は本棟の手前に位置する警護員の詰所まで連行され、そこで釈放された。
スティアータ・バイソネルと名乗った警護員はリアに跪き、謝罪した。俯いた顔から表情は窺えなかったが、リアは声に笑いの響きを聞き取っていた。悪いとは思っていないようだった。
もう一人の警護員バルキッサ・ガトリーは、警護員として当然の処置として謝罪を拒み、リアたちも了承していた。
「部屋に戻りましょ。多分、直ってるわ」
アルが返事をし、二人は宿泊棟へと向かった。
人に対して治療を施す治癒室があるように、物に対しては工房があった。求法院には相応の人員がいるので、あの程度の損傷なら作業も短時間で終わっているはずだった。