2-25 警護員VS.二体のヴァン・キ・ラーゴ
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
警護員が口の端を吊り上げて大きく笑った。
次の瞬間の行動にリアは眉間に皺を寄せた。
警護員は残ったピアスをむしり取っていた。耳たぶが破れ、血が散った。見ている側が痛みを覚えそうな嫌な光景だった。
鋭い声とともに警護員の手からチェーンが伸びた。拡大しつつ二手に分かれたチェーンはヴァン・キ・ラーゴの迎撃をかわし、生き物のように巻きつくと拘束した。
二体のヴァン・キ・ラーゴは両腕ごと胴体を巻かれた状態で突進した。警護員は体当たりによって致命傷を受けるはずだった。
警護員が気合いのこもった声とともにチェーンを振った。細い体からは想像もつかない激しいかけ声だった。重量のあるヴァン・キ・ラーゴの巨体は空中を横断してドアを突き破り、他の部屋に押し込まれた。警護員が手を放すとチェーンはひとりでに部屋の中ににじり寄り、姿を消した。二体のヴァン・キ・ラーゴは沈黙していた。
何てやつ…。相転儀の力があるにしても、ヴァン・キ・ラーゴを二体も同時に持ち上げてあしらうなんて。
リアは、次の一手を模索しながら警護員を見た。拘束された腕の先の警護員の顔は笑っていた。緑色の瞳が人の目とは思えないほどの輝きを示していた。
「久しく感じたことのないこの高揚感、この歓喜。バザム家の息女に感謝と血の返礼を」
低く地を這うような声とともに警護員が鎖を手繰った。
リアの頭の中を一つの言葉が走り抜けた。