2-3 反目
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「考え直せ、リア。そんな胞奇子を選んでどうする? 魔王の調制士になるのが君の夢だっただろ?」
「そうよ。だから、あたしは彼を選んだ」
「何を言ってるんだ。魔王になれるのはぼくしかいない」
レガートの主張を聞いてもリアは何も答えなかった。
「儀式はまだだろ? 理由は何でもいい。今すぐパートナーの変更を願い出るんだ」
「無理よ。あなたも知ってるでしょ? 複数の証人がいる場合は儀式の有無は関係ないわ」
リアが冷静に指摘するとレガートは黙った。視線をアルに向けると凶悪な表情を形作り、足を踏み出した。
「なら、今すぐこいつを始末して―」
「やめてっ!」
腕を引き、リアはアルを背後に移動させた。背にかばう。射抜くようにレガートを見据えると残った手を胸のボタンに添えた。
「リア!?」
レガートの顔には戸惑いがあった。
「ぼくと闘うっていうのか?」
「あなたがそうしたいというのなら」
場の空気が張りつめた。しばらくの間、誰も声を発さず、膠着状態が続いた。
レガートが搾り出すように言った。
「…ぼくは君と闘うためにここに来たわけじゃない」
「仕方がないわ。あたしは彼を魔王にするって決めたの。…そう。はっきり言っておくべきね。あなたの幼馴染のリーゼリア・バザムはもういない。今、この瞬間から、あたしはあなたの行く手を阻むわ」
決然と言い放ち、リアはわずかに身を屈めた。戦闘への移行を予期した動作だった。アルは背後でうろたえている。
レガートは一瞬、哀しげに微笑った。表情が力を失ったかと思うと哄笑し始めた。顔に片手を当て、体を反り返らせて笑った。ひとしきり笑うと二人を睨みつけた。
「そうか。そんなにそのチビ助がお気に入りかっ!? いいだろう。おまえがその気ならこっちだって考えがある。後でぼくの前に這いつくばる羽目になっても知らないからなっ!」
言い捨てると、レガートは荒々しい足取りで戻っていった。ホールにはリアとアルの二人だけが残された。