2-22 白い仮面
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
…結構、やるわね。
リアは離れた場所で戦闘を眺めた。敵にとって不意の一撃をいなされたのは誤算のはずであり、望まぬ打ち合いにもかかわらず善戦していた。戦闘はヴァン・キ・ラーゴに任せ、リアは相手を観察した。
胞奇子、調制士ともに白い仮面を被っているのは同じだ。額の部分は広く、顎にかけて細まる形の仮面で顔を隠している。光沢のある表面は丸みを帯び、口と鼻に当たる部分に下が弧になった細い隙間があった。目の部分も同じ形に削り取られ、濃い暗色の付いた半透明の材料で塞いであった。相手の目は確認できないが、こちらは見えているはずだ。隙間の形が同じなので、まるで大きさの違う口が三つ並んでいるように見える。不気味なデザインの仮面だった。
高硬度セラミデラ?
リアは仮面の材料に気づいた。
元々食器などに使われる陶器を相転儀で焼き固め、武具に応用した魔族がいるという。硬く軽量で衝撃や酸にも強い素材は、簡素な外見ながら実戦向きだった。
随分と希少で高価なものを持ってるじゃない。
背後に大きな黒幕を感じた。同時に相手の胞奇子の特徴に気づいていた。
胞奇子は両手の剣を自在に操った。強く打ち込んだかと思えば、牽制と攻撃を組み合わせて駆け引きを交えた戦い方をした。手の平を支点にして方向を変える炎の剣は盾の役割もした。剣術ではない体捌きと合わさって舞のような剣だった。
その攻撃を繰り出す胞奇子の体の線が妙に細いのだ。着ている制服は胞奇子のものなのに背も低く、まるで女性種のようだった。毛先を寝かせて短くまとめた髪は金色だった。