2-20 宿泊棟での襲撃
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
前庭を渡った二人は調制士の宿泊棟に戻っていた。午前の訓練のためだ。
いつものように荘重な階段を昇り、リアの部屋の前まで来たところで異変は起きた。
突如、通路の向こうに人影が現れた。
人影は二つあった。階段から姿を見せた人影は白い仮面をつけていた。身につけているのは求法院の制服だ。
「リアっ!」
声に反応してリアが振り返ると、上がってきた階段の方向をアルが見ていた。視線の先には同様に仮面をつけた人影が二つあった。
動くのは人影たちが早かった。襲撃する側と対処する側の違いがわずかな時間の差となって表れていた。
通路の両側から火球が迫った。
リアは迫る脅威に目を見張った。
間に合―
思考を爆音と炸裂する炎がかき消した。
破壊された壁や廊下の破片が落ちる音がした。爆発によって生まれた煙と粉塵が収まった時、動揺を露にしたのは襲撃者の方だった。
アルとリアを大きな光の球が包んでいた。二人に損傷はない。リアの部屋の扉は弾け飛び、壁や廊下は大きく抉れていた。向かいの部屋の扉にも影響は及んでいる。他の部屋から人が出てこないのは訓練中のためかもしれなかった。訓練室では、中の音が洩れないように外の音も聞こえない。