2-17 矛盾するナヤカ
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「―ア・バザム?」
「!?」
ナヤカの声によってリアは心の深みから浮かび上がった。慌てて首を振り向ける。
「何か言った? ナヤカ」
「突然お黙りになったので、名をお呼びしただけです。…珍しいこともあるものですね。あなたがぼんやりなさるとは」
見返すナヤカの表情には、知った者でなくては見逃しそうなほどのかすかな笑みが浮かんでいた。リアは、考えていたことを見透かされたような気がして目をそらした。耳が熱い。動揺をごまかすために声を高めた。
「あなたが落ち着き過ぎなのよ! 魔王の座は諦めたの!?」
「いいえ。ギーツと同様、わたくしの心は魔王の座を見据えています」
「言葉が思いっきり矛盾してるわよ?」
「…そうですね。…でも同時に、ギーツの好きなようにやって、結果として魔王の座が遠のいたとしても仕方がないとも思うのです」
「…やっぱり、矛盾してるわ」
「…かもしれません」
二人は同時に口を閉ざした。間を置いてしゃべり始めたのはリアだった。
「…あなたはそれでいいの?」
「…いいとか悪いとかではないのです。わたくしは、わたくしの心に従うことを則としています。訪れた変化は受け入れねばなりません」