2-16 求めたから応じた
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
余計に馬鹿馬鹿しくなったリアは言ってやった。
「もっと、信じなさい」
「?」
ナヤカは不思議そうにリアを見た。リアはナヤカを一瞥すると視線を戻した。
「あんたの片割れわね、女だろうが男だろうが、ううん、対象が人間でなくたって美しけりゃ何でもござれの変態なんだから。たとえあんたがヘラヘラ笑って人を殺すような快楽殺人者だったとしても手放しゃしないわ。逃げられないぐらいに思っとけば丁度いいわよ」
「…そうかもしれません」
ナヤカの呟きには、かすかに笑んだ響きがあった。
今度はリアが訊く番だった。アルとギーツの交友についてだった。
「…あなた、この状況、気に食わないんじゃないの?」
「…そうですね。確かに承服し切ったわけではありません」
二人は互いに目も向けずに会話を進めた。
「なら、どうして止めないの?」
「強いて言うなら、彼が望むからです」
「もし、魔王に成り損ねても?」
「はい」
淀みのない返事に、リアは眉根を寄せて横目でナヤカを見た。
「随分と寛容じゃない。パートナーを魔王にするために使えるものは全て使った女が」
「…計算したわけではありません。彼が求めたから応じた。それだけです」
ナヤカからの返事は変わらず静かだった。当てこすりを狙ったリアの方が、その静かさに揺さぶりを受けた。
求めたから応じた? ならば、あたしはどうなのだろう? もし、今アルが望めばあたしも応じるのだろうか? 仮にそうなら、何のために? 魔王の調制士になるという野望のため? 義務感? それとも―。