2-13 少し、妬けた
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
リアとナヤカは離れた場所まで下がっていた。ギーツが体技も交えて説明するからだ。別の木を背にして立ったまま眺めている。気を休め過ぎて周囲への警戒を忘れないための配慮だった。
一通りの内容を話し終えるとギーツは雑談を始めた。訓練漬けの中の数少ない憩いの時間としてリアもナヤカも黙認していた。
ギーツもアルも楽しそうに話をしている。身振り手振りを交え、声も高い。アルはいつも明るさを忘れないが、ギーツと会話に興じている時は取り分けよく笑う。訓練のために厳しく接することもあり、リアといる時にアルはあんな風に笑うことはない。少し、妬けた。
「リアは望んで王選びに参加なさったのですか?」
二人の様子にリアが目をやっていると珍しくナヤカが話しかけてきた。
「そうよ。あなたは違うの?」
「…そうですね。望んで、とは言い難いかもしれません」
リアが黙っているとナヤカは言葉を続けた。
「…わたくしは、幼少の頃から王選びのことを聞かされて育ちました。ですから、王選びへの参加を当たり前のように受け取っていました」
ナヤカの話はリアにも当てはまった。貴族の子息、子女は大抵同じ境遇の中で育つ。
「ですが、長ずるにおよんで少々疑問を感じるようになりました。わたくしのような者が魔王となる人間の近くにいても良いのかと。それでも、わたくしの血族は王選びへの参加を強く望みました。…内実は、体のいい厄介払いです。場合によっては、魔王の調制士になれなかったことを理由に放逐することも可能でしょう」