2-12 一度もないのか?
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「何だ、その反応は? まさか、一度もないのか?」
露骨なギーツの質問にアルが頷いた。顔が赤い。リアが抗議した。
「調制士が胞奇子の恋人とは限らないわよ!」
「そりゃそうだが…」
ギーツが鼻から息を抜いた。
「バザム家のお嬢様は、見かけによらずお堅いね」
「この際、見かけは関係ないでしょ!?」
顔を赤らめ、リアは大きな声を出した。ギーツは楽しそうに笑った。
会話を交わしながら歩いているうちに四人は一つの植栽の傍までやってきた。
三本の木が寄り添うように植えられた場所だった。大きく枝分かれし、横に枝葉を広げた木は下に程好い木陰を作り出していた。
庭園には同じような場所がいくつもあった。求法院は建物の周辺には大きな植栽がなく、城壁に近づくほど豊かになる構造だ。緑は豊かで、裏手には小さな森さえも擁する。四人が辿り着いた木の周辺にも間を置いて木が立ち並んでいた。
木陰に入るとギーツはすぐに講義を始めた。
「いいか、アル。戦闘ってのはリズムの崩し合いだ」
「リズムを…、崩す?」
「そうだ。自分のリズムを保ちつつ、いかに相手のリズムを崩すか。その駆け引きが戦闘の趨勢を決める―」