2-10 友達になって、少しだけよかった
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「次はアルが危ないかもな。気をつけろ」
歩きながらギーツが言った。
容器を返却したリアとナヤカは、丸屋根の建物でアルとギーツに合流していた。グナエグたちについては仕掛けられた闘いでもあり、求法院から問い質されたら対応すればよいということになっていた。いつもの講義のために庭園に植えられた木の陰に移動している最中のことだった。
「どうして?」
リアが尋ねた。
「おまえさんを襲ったやつの目的がアルの妨害なら直接狙うかもしれない。仮にナヤカの一件も関わりがあったとしてもひとまず片づいたからな。今、一番火種が漂ってるのはアルだ」
「それなら、あなたも一緒でしょ? 関連があるなら、ナヤカの胞奇子であるあなたを狙ってくるかもよ?」
「…そうだな。どうした? 随分と親切じゃないか」
「まあね。あなたたちと友達になって、少しだけよかったと思ってるもの」
そう言ってリアはナヤカを見た。
「そいつは光栄だ」
「茶化さないでよ」
「本気で言ってるのさ。受け入れてくれるやつがいるってのは、いいもんだ」
ギーツの真摯な物言いにリアは思った。一見気楽に生きているように見えるこの男にも、先ほどの会話のように屈折した思いが潜んでいるのだ。叶うならば、いつかゆっくり旅の話などを聞いてみたいものだと思っていた。