2-7 グナエグとマリュールの消失
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「―!」
驚愕にリアが目を見開いた時には全てが終わっていた。
ナヤカの手前で中空に黒い球体が生まれた。数は三つ。ごく小さな明確な輪郭の球体だった。
球体の一つは宙を飛ぶグナエグ目がけて音も無く瞬時に移動し、身体に触れる前にグナエグを飲み込んだ。リアの目にはグナエグの姿が、間違って排水溝に落ち、圧縮されながら吸い込まれる紙のように見えた。グナエグを飲み込んだ球体は、わずかに収縮すると空中で四散した。砕け散った球体は空気中に溶け込むように消えていった。後には何も残らなかった。
二つ目の球体はヴァン・キ・ラーゴを包み込んだ泡を目指した。黒い球体は泡に到達したかと思うとヴァン・キ・ラーゴごと泡を消滅させた。グナエグの時と相違したのは泡を飲み込みながら先に進んだことと、ヴァン・キ・ラーゴが円形に喰われたことだった。それもわずかな違いで、黒い球体がヴァン・キ・ラーゴに到達した時点で全ての作業は完了していた。作業を終えた黒い球体は、やはり四散して消えた。
球体の三つ目は、泡を消した球体の後を追って移動し、何もなくなった空間を通り過ぎるとマリュールを襲った。マリュールもまた、グナエグと同様に飲み込まれていなくなった。黒い球体が消滅したのも同じだった。
起こったことはそれだけだった。一連の出来事が瞬く間に終わった。
沈黙と静寂の時が過ぎた。