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2-6 ナヤカ、参ります
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「―」
次の戦闘を予期し、髪飾りに手をやるリアの前にナヤカが進み出た。
「ちょっと―」
リアの抗議の声は途中で遮られた。
「初手はあなたにお任せしました。次はわたくしの番です」
静かな口調には有無を言わせない響きがあった。
「しばらく、お願いします」
言葉とともに差し出された容器をリアは受け取った。
「やっとお出ましか」
凶悪な歓喜の表情をグナエグは浮かべた。不満げに顔を歪めるリアの目前で新たな戦闘が始まろうとしていた。
「クランゼール統主、ヨナト・エジェイルが娘、ナヤカ。参ります」
ナヤカはスカートの裾を指先で持ち上げると典雅に一礼した。
「スカしてんじゃねえぞ! 殺人狂がっ!!」
叫ぶのと同時にグナエグの頭が炎に包まれ、獣の形を取った。助走も無く地を蹴るとナヤカに向かって飛びかかった。
勝負は一瞬だった。