2-5 溶けゆくヴァン・キ・ラーゴ
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
リアはヴァン・キ・ラーゴに指令を送ってグナエグから距離を取ろうとした。
「!」
グナエグはリアの意図を見越したかのように追随した。左右に素早い挙動を示し、外見通りの獣じみた動作で頭上を跳び越えるとヴァン・キ・ラーゴの背後に降り立った。
ヴァン・キ・ラーゴが身を翻した時には勝負が決していた。振り向きざまのヴァン・キ・ラーゴの回し蹴りを回避し、グナエグが懐に飛び込んだ。打撃を受けたヴァン・キ・ラーゴは泡の中に没していた。
やられた!
瞬間、リアは思った。
標準タイプのヴァン・キ・ラーゴは速さにおいても高い性能を有している。だが、グナエグの運動能力はその上を行った。泡からの脱出を図るべく、リアはヴァン・キ・ラーゴに指示を送った。
反応はない。
泡の中のヴァン・キ・ラーゴは無様にもがき続けていた。コントロールから外れているとリアは判断した。マリュールの泡の影響かもしれない。半自律型のヴァン・キ・ラーゴは、リアのコントロールを離れると内蔵の思考プログラムに従って動く。今はその状態だった。
しばらくもがき続けたヴァン・キ・ラーゴは、動作を止めると泡の中に浮かんだ。輪郭が徐々にぼやけていくのがリアの目に映った。
溶解性の泡か―。
苦々しい思いで泡を見つめるリアに、グナエグが勝ち誇ったように言った。
「今度はこちらの落とし前をつけてもらおうか。おれの邪魔をした罪は重いぞ」
頭部を包む炎が消えていた。ヴァン・キ・ラーゴを泡に突き込んだ時点で体の向きも変えている。