2-4 殺人姫(さつじんき)
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「わたくしのことは放っておかれた方がよいのではありませんか?」
ナヤカの声にリアは瞬間、視線を向けた。
「そうはいかないわ。アルのやられた分を返しておかないと気が済まないもの。あんたこそ厄介事はあたしに押しつけて楽すれば?」
「そうは参りません。この方たちはわたくしに用があるのです。たとえ望まぬ客であっても放っておくわけにはいきません」
リアは、ナヤカの言い様にふと笑った。
この娘は殺人姫のくせに妙なところで律儀だ。
「だったら、マリュールの出方を見てて。成り行き次第であんたの力を借りるわ」
「…分かりました」
ナヤカはリアの隣でグナエグのパートナーを見守った。
グナエグとヴァン・キ・ラーゴの戦闘は激しく続いている。リアは一人と一体の攻防に注意を払いつつ、マリュールに目をやった。
アルの話では大きな泡を吐いたそうだけど…。どんな性質かが分からない。
思案するリアの視線の先でマリュールが大きく口を開けた。
仰向けた顔から半透明の泡が吐き出され、徐々に大きさを増していく。膨張した泡は移動しつつ空中で融合し、巨大な泡に変貌した。人の背丈の三倍はある。泡がグナエグとヴァン・キ・ラーゴの闘争の場に迫った。