2-1 お返しの機会
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
リアの望んだ機会は意外に早く訪れた。
最近の日課は朝食の後のギーツによるアルへの知識の伝授とリアによる訓練、昼食の後にフィードバックと訓練というものだった。
講義の前にナヤカが容器の返却を申し出たのだ。支給品であるバスケットとは違い、アイスの容器は借り物だった。
一人にするのは危ないと考えたリアは、ナヤカについていくことにした。もしかしたらアルに手を出した二人組と会えるかもしれない、という想像もあった。
アルとギーツを丸屋根の建物で待たせておき、食堂にまでやって来た二人の前に二つの影が立ちふさがった。
食堂近くの広場に男性種と女性種のペアが並んで立っていた。男性種にしては背が低めの逆立った髪をした胞奇子と青灰色の長い髪をした調制士だ。
こいつらか。
歓喜の笑みをリアは浮かべた。伝え聞いた特徴とぴたり一致している。一目で直感した。
それにしても、いい度胸ね。
同時に相手の行動に驚いてもいた。ナヤカに対する襲撃は先ほどしくじったばかりだ。普通は相手の動向を警戒して用心するものだ。帯同者が変わって与しやすいと思ったか、それともよほどナヤカに怨念があるのか。
リアはナヤカを盗み見た。いつもの静かな表情で二人を見ていて、落ち着いたものだった。
姿に似合わず、どれだけの死骸の上に立っているのやら。
笑って前に向き直った。
いずれにしても、お返しの機会が来たことに感謝を。
闘争の予感にリアは打ち震えた。食堂は胞奇子や調制士が集まる場所だ。当然のごとく諍いも起こりやすい。それを予期して食堂の周りは広々としているのかもしれなかった。
髪飾りに触ると、リアはヴァン・キ・ラーゴを一体生成し、前面に立てた。