1-21 どこかでお返しを
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
ギーツは黙考し、アルはリアを振り返った。
「リアは知ってたんだね?」
「まあね。聞かせない方がいいと判断したけど。心配することもなかったわね」
リアはギーツに向き直って尋ねた。
「あたしへの襲撃も何か関わりがあるのかしら? ああ、別に巻き添えとかってわけじゃなくて」
「分かってる。だが、それはないだろう。グナエグとやらの目的は明確だ。アルも遠ざけようとしたようだしな。おまえさんなら余計にそうだろう」
ギーツの指摘を受けてリアは黙った。
確かにアルの話ではトラブルの中心はナヤカだ。夜分の襲撃から日も浅く、女性種を狙うという示し合わせたかのような符合が気になったに過ぎない。思い違いならそれでいい。
「あなたの言う通りだとすると、そちらも火種を抱え込んだことになるわね。どうするの?」
「どうもしないさ。ナヤカに火の粉がかかるなら、おれも払う。それだけだ」
ギーツは固く言った。
リアは頷きを返すと二人を襲った人物について考えた。アルの話からするとグナエグ・エンゲッツァとマリュール・ザビランのペアだ。全てのペアの名前をリアは暗記していた。個々のペアの構成は秘密でも何でもなく、宣始式の後で名簿になって配られている。この二人とはアルも自分も接点はない。ギーツの言うようにナヤカを狙った瞬間にアルが居合わせただけかもしれなかった。理由はどうあれ、他人の胞奇子を害そうとはいい度胸だ。
どこかでお返しをしてやらないと。
リアは思った。
「…リア、顔が怖いよ」
「そう?」
リアはアルの指摘を笑って受け流した。
以後、四人の朝の時は和やかに過ぎた。