1-20 訊いたら負け
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「リア、あなたもいかがですか?」
「え? ああ、もらおうかしら」
差し出されたアイスをリアは受け取った。スプーンで静かに口に運びながら、ナヤカやアルの様子を伺った。ナヤカにいきなり愛称で呼ばれて戸惑っていた。出会ってからこれまでナヤカは呼び方を変えようとしなかったからだ。
アルもナヤカも特別気にした様子はなかった。ギーツは、アイスを食べるナヤカを笑みを浮かべて見ている。二人の間で何があったのか追及する気はなさそうだった。
リアは何だか面白くなかった。ナヤカの唐突な変化の理由が気になった。気になりながらも疑問を口にしたいと思う気持ちを抑えつけた。訊いたら負けのような気がした。
しばらく四人でアイスを味わったところでアルが言った。
「やっぱり知らせておいた方がいいと思うから話すんだけど…」
「?」
アルの告白はリアを激怒させた。
「どうしてそんなことを今まで黙ってたのよっ!」
「だって、心配すると思ったから…」
「黙ってられたら、あたしが何も分からないじゃない! 今度からあったことは何でも話しなさい! いいわね!?」
「う、うん」
「まあまあ」
憤激するリアをギーツが宥めた。
「そう怒りなさんな。それよりも、アル、こちらのトラブルに巻き込んでしまって済まない。…ナヤカの過去も知られてしまったな」
「どっちもいいんだよ。結局、うまく逃れたし」
「そう言ってくれるとありがたい。…そうか。ナヤカの昔の行状がこんな形で影響するとはな」