1-18 強引な論法
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「だったら、おれたちはそんなに違ってるわけじゃない。おれだって楽しくやるために何もしなくていいとは思っていない。持っている力を使わなければ楽しいことは手に入らないからな。おれは美しいものが見たいだけなのに、邪魔されることもあれば、見たくもないものを見せられることもある。望むものを手にするためには力を使うことも必要さ。そう考えれば、おれたちは実は同じなんじゃないのか?」
「強引ね」
「いいじゃないか。強引でも重なり合ったところがある方が離れたままよりずっといい」
ギーツの論法にリアは苦笑し、ギーツもまた楽しそうに笑った。
「ま、何にしてもよろしく頼むぜ。アルの調制士ってだけじゃない。おまえさんのような人間といれば、ここでの生活も楽しくなりそうだ」
「何だか含みのある言い方ね」
「ドロスをいなした手並みはなかなかだったぜ。面白い能力を持ってるじゃないか」
「そこも見てたの?」
「そんなに困った顔をしなくてもいいじゃないか。あれだけ大勢の前で立ち回りを演じたんだ。今さら気にしても仕方がないだろ?」
リアは眉間の皺を深くした。
そりゃあね、闘うのが怖くて魔族はやってられないわよ。おまけに調制士だもの。でも。でもでもでもでもでも。
もっとスマートなやり方があったんじゃないか。いまさらながらに惑うリアであった。
「お。ようやくご到着だ。向こうも珍しい取り合わせだな」
リアの葛藤をよそにギーツはアルとナヤカに手を掲げた。丸屋根の建物に向かって二人が前庭を歩いて来るところだった。