1-17 楽しいという価値観
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
問われたリアは眉をひそめた。ギーツの理屈はとてもよく分かるような気もしたし、同時に言いくるめられているような不安定な気分ももたらした。リアはわざとらしく首をかしげてみせた。
「あなたの言ってることは、何だかよく分からないわ」
「それでいいさ。無理に分かろうとする必要はない。暇があったら考えてみてくれりゃいいし、何だったら忘れてくれてもいい。深刻になると楽しくないからな」
楽しいという言葉にリアは引っかかった。楽しいという言葉はギーツにとって重要なもののようだった。以前にも聞いた。
「楽しい、ってそんなに重要なことかしら?」
「無論さ。この世に生まれた人間は死ぬまでは生きなきゃならない。どうせ生きるなら楽しく生きなきゃ意味がないだろ?」
「あたしはそうは思わないけど」
「? なぜだ?」
問われたリアは、生きる意味についての自分の考えを語った。ギーツが小さく二度うなずいた。
「なるほどな。おまえさんの考えはよく分かるぜ。だが、おまえさんだって、どうせ力を使って生きるなら楽しい方がいいだろう?」
「そりゃあ…まあ…、そうね」
淀みながらもリアは肯定した。