1-16 自分とは違う何かが必要
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「おれはアルといることも、おまえさんといることも楽しんでいる。それでいいじゃないか」
「…あたしには理解できないわ。くどいけど、ここで友達を作ってもしょうがないとは思わないの?」
「思わん」
「どうしてよ?」
「おれたち人間には、いつだって外部が必要だからだ」
「外部?」
「そうだ。おれたちは、みな、いつだって自分を超え出たいと思ってる。そのためには自分とは違う何かが必要なんだ」
リアが不可解そうな表情をしていると、ギーツは言葉を続けた。
「たとえば、おれはアルと友達になることでおまえさんを手に入れた」
「あたしはアルの調制士で、あなたのものになったつもりはないわ」
「そういう意味じゃない。おまえさんという新しい要素を手に入れたってことさ」
「だから何よ。あたしはあなたに何もしないわよ」
「それでいいんだ。おれはおまえさんに何かしてほしいなんて思っちゃいないし、おれも何かしてやろうなんて思ってなんかいない。おまえさんはただ、おまえさんのままでいてくれればそれでいい」
「それに何の意味があるのよ?」
「おれたちは、出会った瞬間にそれ以前のおれたちとは変わったじゃないか」
「変わってなんかいないわ」
「そんなことはない。外に現れるような目立った変化がないだけで、おれはおまえさんを知ったし、おまえさんもおれを知った。それは明らかな変化だ。違うか?」