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1-15 空姫(からひめ)の選んだ男
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「そうだ、リア、おれの理想を実現するために何かいいアイデアはないか?」
「あたしに訊かないでよ。あたしはアルを魔王にするんだから」
「なるほど。おれが魔王になった時のことを考えても仕方がないな」
快活に言うギーツとは対照的にリアは奇妙な顔をした。
「あたしはあなたを疑ったのよ? 何とも思ってないの?」
「謝罪ならしてくれたじゃないか」
「それはそうだけど…」
「おれはおまえさんの気質を気に入っている。アルに友人になりたいと申し入れた時、おれはおまえさんを調制士として褒めた。覚えているか?」
リアは頷きを返した。
「あれは嫌味でもお世辞でもない。心底思って口にした。おまえさんの用心深さはきっとアルの役に立つ。おれが疑惑の対象になるぐらい些細なことさ」
リアは改めてギーツという男を見直していた。落ち着いた印象を受けるのも道理、どこか精神的に余裕があるのだ。さすがに空姫の選んだ男だけのことはあった。