1-13 ギーツとリアの共通項
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
ギーツは笑みを絶やさずに言った。
「この世界をおれのような人間が生きやすい場所にするためだ」
リアがかすかに眉を寄せるとギーツは話を続けた。
「以前にも言った通り、おれは漠主の息子として生まれた。だから旅証にも当然その事実が記載されていた」
旅証は魔族が領地の外に出かける際に携行する書面だった。旅をする者の名前や居住地、身分、旅の目的などが記されており、境を越えて領地を行き来するには必須のアイテムだ。
「だから、どこに行ってもひどい扱いはされなかったし、丁重に出迎えてくれた所もある。しかし、喜んで受け入れられたかというとそうじゃない。おれは結局、異邦人であり、何よりも異端者だったからだ。おれはただ、美しいものが見たいだけなのにな」
「それを変えたい?」
「そうだ」
ギーツは静かな意思のこもった瞳でリアを見た。
本心を告げている、とリアは感じた。ギーツの性質を考えれば納得のいく話だったし、何よりも欺く理由がない。リアを襲ったのがギーツなら嘘を並べ立てていても不思議はないが、その考えはとうに捨てている。
軽く生きているように見えるこの男も、己が望むものと実現のための世界の変化を求めている。リアはギーツの中に共通項を見た思いがした。