1-12 ギーツへのリアの問いかけ
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
困惑しているのはリアも同じだった。求法院で支給される制服は、身分の証であるのと同時に参加者の逸脱した行動を抑制する枷だ。布地に織り込まれた相転儀によって個々の人物が特定され、王選びに参加している間は位置も逐一把握されている。ただし、枷を外すのは容易で脱げば済む。その代償として制服を着ていない者は、あてがわれた部屋を除くあらゆる場所で部外者として排除される運命にある。ルールの例外として胞奇子や調制士にも無条件での攻撃が許可されている。夜とはいえ、誰にも見咎められずに済ますのは限りなく不可能だった。
「まあ、魔族の中には時たまとんでもないのがいるけどな。闇に同化できるやつとか」
「その場合、手すりの髪の毛はどうなるの?」
「なるほど。残るわけがないな」
思案げなギーツを見ながらリアは話題を変えた。襲撃の件についてリアの関心は薄れつつあった。
「そのことはもういいわ。ちょうどいいから、質問に答えてくれる?」
「尋問でもする気か?」
「そんなんじゃないわ。一緒にいるなら、お互いのことは知っておいた方がいいでしょ?」
「いいぜ。何が訊きたい?」
「あなたは、どうして魔王を目指すの?」
根源的な問いかけだった。享楽者のような生き方を選んだ人物が、どうして魔王を目指すのかリアには不思議だった。王選びに参加した理由を聞けば、ギーツという男を知る手がかりになるとも思っていた。