1-11 ギーツとリアの会話
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「よお」
リアが丸屋根の建物に近づくと先客が振り返った。いつもの場所に座ったギーツだった。
「珍しいな。独りか?」
「見ての通りよ。そっちこそ大事な姫君はどうしたの?」
リアは笑みを浮かべながらも打ち解けない態度で言った。生来の性格の上に、ギーツという男を突き放して見ているせいだった。襲撃事件についてのわだかまりはなくとも、どこか窺い知れない人間だという思いが拭えなかった。
ギーツはそんなリアの思惑も気にしてはいないようだった。おどけた仕草で言った。
「姫君はあまーいアイスがご所望だ」
「アイスクリーム? こんな朝っぱらから?」
「こんな朝っぱらからだ。時折無性に食べたくなるんだそうだ。で、おれだけ残して取りに行った。結構わがままなんだ、あいつ」
「そのようね」
苦笑しながらリアは席についた。テーブルの上には朝食と思しきバスケットが置かれている。ナヤカの席の前だった、
「義理堅いのね」
「食事はみんなで食べた方がうまいだろ?」
ささやかなやり取りの後、ギーツが訊いた。
「ちょっかいを出したやつは分かったか?」
リアは首を横に振った。
「求法院は何と言ってる?」
「あの時間、あたしの部屋に近づいた人物はいないそうよ」
「そいつぁ、おかしいな」
ギーツが首をひねった。