1-12 ぼくとペアになって!
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
快諾されるものとばかり思っていた。が、少年の返事は鈍かった。
「え? でも、ぼく、君のことよく知らないし…」
弱々しい返事はリアの心をイラつかせた。予期に反していたことが余計に怒りを倍増させた。
この男は―!
喚き出したい衝動はかろうじて堪えた。
普通は男性種から声をかけるものでしょ? そこをまげてあたしの方から申し込んだのに。その態度は何? …確かに言い方はぞんざいだったけど。
限界を迎えそうな気持ちに蓋をしてリアは言った。
「…あたしの名はリーゼリア・バザム。アンタ…あなたの名前は?」
「ア、アルカシャ・クルグ」
「いい? アルカシャ・クルグ。あたしは気が短いの。あなたがうんと言わないなら、あたしはあなたと何の関係もない。当然、助ける理由もない」
リアは振り向かずに右手の親指で後ろを指し示した。
「あなたが頷かないなら、あの檻を即刻解除して中のケダモノを開放するわよ?」
「オレ様をケダモノ呼ばわりすんじゃねえっ!!」
聞きとがめたドロスの怒声が響いた。リアは無視した。
「どうする? どのみちあなた一人じゃ魔王にはなれない。調制士が必要なのは分かってるんだから、どうせならあたしを選びなさい」
「…でも」
こいつ、まだ言うか。
煮え切らない態度にリアは機嫌を損ねた。不興げな表情を浮かべて指を鳴らした。背後で金属音が響いた。檻の前面上部で格子が一部消滅していた。
ドロスとアルが同時に反応して空隙に視線を向けた。人一人がちょうど通れそうな隙間に向かってドロスが檻をよじ登ろうとした。
アルが屈服した。
「分かったよっ! ぼくとペアになって!」
布袋を取り落とすと素早い動作でリアに取りすがった。リアは満足げに微笑った。
「アルカシャ・クルグ、ううん、アルでいいわね。あなたは今、極上の選択をしたわ。あたしが保証してあげる」
リアの微笑みと同時に消えた格子が復活した。今度は音はしなかった。