1-4 血みどろ空姫(からひめ)と呼ぶ男
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「…」
アルカシャ・クルグは言葉に詰まっているように見えた。ナヤカに積極的に関わろうという意思がないので無理もなかった。普段一緒にいるとはいえ、心理的に近しいわけではない。ギーツの希望がなければ、こうして会話することさえないはずの相手であった。アルカシャ・クルグの調制士であるリーゼリア・バザムに対しても同様だった。どう対応すべきか迷っていると横から声がかかった。
「よお、血みどろ空姫」
声は右手からした。ナヤカは静かに首を振り向け、アルも倣った。二人の視線の先には見慣れない二人組みがいた。
一人は浅黒い肌をした男性種で、短めの黒髪を棘のように逆立たせている。白目の多い瞳がアルたち二人を挑戦的に見つめていた。背は男性種としては低めだ。片手をスラックスのポケットに入れ、顎を上げた姿で立っていた。
もう一人は女性種で、調制士だと思われた。青みがかった灰色の髪は長く、まとわりつくようにして膝まで伸びていた。髪が顔を覆っているために鼻筋と頬の一部、病的な青白い肌とは対照的にルージュをひいた紅い唇しか見えない。体は細く、背は隣の男性種とほぼ一緒だった。黙って横に並んでいる。