4-15 人の心の中も
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
アルが困惑したように言った。
「やめようよ! ぼくたちが言い争っても何の益もないよ」
「そうだな。ナヤカ、この程度じゃ、おれの方針は変わらん」
「…あなたがそう言うのなら」
ナヤカはそれきり口を閉ざした。ギーツは息を抜くと立ち上がった。
「お互い少し冷静になった方が良さそうだ。今回はこのぐらいにしておこう。行くぞ、ナヤカ」
ナヤカは、足元に置いてあったバスケットを手に持つと無言で席を立った。
去り際にギーツはリアに声をかけた。
「リア」
「?」
「重ねて言うが、おれは友達の調制士にちょっかいを出したりしない。たとえ、どれほど美しくても、だ」
「見え透いたお世辞なんか残さなくていいわよ」
「お世辞なんかじゃない。おまえさんは美しいよ。おれのナヤカには敵わないがな」
「はいはい」
あけすけな褒め言葉を口にし、自分の調制士に対する配慮も忘れない。この辺りは最初の印象通りだとリアは思った。
リアの投げやりな返事にギーツは笑いを残して立ち去った。リアは、横に並んで歩くナヤカとの後ろ姿を椅子に座ったまま見送った。
人の心の中も相転儀のように目に見えて、分かりやすくケリがつけばいいのに。
リアは心の中で呟いていた。