4-12 友達を悪く言うのは許さない
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「それ以上は駄目だ、リア!」
驚きの表情で見るリアを筆頭に、ギーツとナヤカの視線もアルに集まった。
「ギーツだって確証はないんだろ? 話を聞いてると男性種だって決まってるわけでもない。なら、それ以上追求しちゃいけない」
諭すように言うアルに対し、リアは不服そうな顔をした。
「襲われたのはあたしよ。アルは黙ってて」
「黙らない」
「アル!?」
リアは再度、驚きの表情を形作った。
「前にそう言われた時は、ぼくとギーツはまだ友達じゃなかった。だけど、今は違う。たとえリアでも友達を悪く言うのは許さない」
毅然とした態度で言い放つアルと驚きの名残を残したリアは視線を交じ合わせた。しばらくしてリアは大きなため息をついた。ギーツに向き直ると左手を掲げた。
「非礼を詫びるわ、ギーツ・バルファイク」
ギーツは真摯な表情で同様に左手を掲げた。
「謝罪を受け入れよう、リーゼリア・バザム」
リアとギーツが行なったのは略式の謝罪の儀式だった。魔族の間で公的な関係を含む多様な間柄で交わされる。儀式を通すところにリアの側に未だ心の壁が存在することを示していたが、同時に自らの過ちを認める素直な心の働きも示されていた。険悪な雰囲気は払拭されていた。