4-10 甲斐性なし
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
リアの憤激をギーツは笑って受け流した。
「何だ、違うのか?」
「当たり前でしょっ! この男のどこにそんな甲斐性があるってのよっ!」
言い捨てるとリアは苛立たしげに鼻を鳴らし、腕を組んでそっぽを向いた。
ギーツはさもおかしそうに喉を鳴らして笑った。その様子を薄く目を開けて伺ったリアは再び頑なに横を向いた。何事もないことを知った周囲の人々も姿を元に戻した。アル一人が居づらそうに首を竦めている。ナヤカは二人のやり取りを静かに見つめていた。
「まあ、実際のところは昨晩のゴタゴタだろ?」
ギーツの言葉にリアは険しい視線を投げた。
「…その通りだけど。何があったか知ってるの?」
「詳しいところは知らないな。おまえさんの部屋で騒ぎがあったらしいことは分かる」
「あたしの部屋、知ってるんだ?」
「ナヤカから聞いてたからな」
リアは無言でギーツを見つめた。しばらくしてポケットから白い紙の包みを取り出すとギーツに差し出した。
「これを見て」
「封筒? 決闘状…のわけはないか」
おどけて封筒を受け取るギーツに対して、リアは真剣な表情を崩さなかった。
「封筒は部屋に備えつけの伝言用よ。中にあたしの部屋に侵入したやつが残していったものが入ってる」
「ふむ」
ギーツが封筒を開けて指を入れる。何も感触が無いと知ると封筒の口を大きく開けて覗き込んだ。眉をひそめ、つまみ出した指の先に金色の髪が絡まっていた。ギーツは封筒をテーブルに置くともう片方の手も使って髪を張り、顔の前にかざした。