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魔王になるには?  作者: 水原慎
第一章 邂逅
12/312

1-11 あたしと一緒に魔王になりなさい!

長文なので分割してアップしてあります。

枝番のあるものは一つの文章です。

サブタイトルは便宜上付与しました。

 リアが、目を見開く少年の様子を伺っていると横で重い打撃音がした。目を向けると、ドロスが立ち上がって檻に拳を叩きつけていた。檻は鈍い音を響かせるだけで震える様子さえ見せなかった。

 何度目かの打撃を試みた後、ドロスは檻を形成する支柱を両手で掴んでこじ開けようとした。やはり檻の様子に変化はなかった。ドロスは支柱を引っ張り続けた。葉をむき出しにして歪めた顔は力みのために紅潮した。

 リアはドロスの抵抗を冷ややかな目で見つめた。わざとらしく両手を腰に当てると檻の中のドロスに向き直った。

 檻に顔を押し当てたドロスが叫んだ。

「何だ、てめえはっ!?」

「てめえじゃないわ。リーゼリア・バザムよ。ドロス・ゴズン、あぶれるのがそんなに嫌なら、残った調制士ぐらい把握しておきなさい」

 痛いところを突かれたらしく、ドロスは顔を歪めると今度は腰を落として檻を持ち上げようとした。唸り声が響いた。

「無駄よ。アンタには見えないでしょうけど、その檻の脚は床の下でつながってるわ。アンタがやってることは自分で自分を持ち上げようとするようなモンよ。って、聞いてる?」

 リアが忠告してもドロスは行為をやめようとはしなかった。リアはため息をついて頭を振った。ドロスはひとまず置いておくことにし、少年へと体を向けた。

 少年は変わらず驚いた表情をしていた。遠目で見たよりも背丈はあり、リアとほとんど変わらない。布袋を体の前で抱きしめるようにして持っている。古びて薄汚れた袋だった。近くで見るとジャケットの革も傷だらけだった。布袋同様にひどく痛んだ品物だ。ボトムも着古してよれていたし、靴も同様だった。しょぼくれて見えるのは旅の疲れのためだけではなさそうだった。

 リアは少年の顔へと視線を移した。

 細く柔らかそうな栗色の髪の毛は日焼けして痛んでいた。その上に半端に伸びて、ところどころ毛先が跳ねている。肌も日焼けして少し黒い。目は琥珀色で薄い色合いをしていた。肉食獣が持つ瞳の色も少年の体格や仕草のために気弱そうな雰囲気を増すだけだった。

 ぶしつけを承知でリアは少年を観察し続けた。

 最初の印象通り、顔に傷はなかった。手も同様だった。かすり傷一つ見当たらない。リアは会心の笑みを浮かべた。胸を張ると少年を指差した。

「アンタっ! あたしと一緒に魔王になりなさい!」

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