4-9 無理矢理は駄目
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
中庭での短いやり取りの後はアルとは口を利かず、リアは丸屋根の建物に辿り着いた。周辺にはわずかに人影がある。ギーツとナヤカは先に座ってテーブルの下の大きめのバスケットとともに待っていた。
「込むとヤなんでな。先に済まさせてもらったぞ」
「そう」
にこやかなギーツの言葉に素っ気なく応じ、リアは席についた。テーブルに置いたバスケットから手早くサンドイッチとコップを取り出すと黙って自分とアルの席の前に置いた。飲み物の入った水筒は二人の間に乱暴に置いた。大きな音がした。アルが遠慮がちな素振りで残った椅子に座る。人の配置は昨日と同じだった。
席についてからも二人は食事に手をつけようとはしなかった。リアは目をつぶって首をそむけ、アルはそんなリアの様子を横目で伺っている。
気まずい時が過ぎた。
口元に笑みをたたえていたギーツが唐突に口を開いた。
「アル」
「え?」
「調制士は口説いてもいいが、無理矢理は駄目だぞ」
「ぼく、そんなこと―」
「誰がそんな話をしてんのよっ!」
慌てて否定しようとしたアルの言葉はリアの怒声にさえぎられた。リアは大きく目を剥き、握った手を腕ごとテーブルに叩きつけた。大きな音が響いた。周囲の人間が振り返る。揺れて倒れそうになった二人分のコップをアルが慌てて押さえた。