4-8 憤激のリア
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
さらにいけないのがアルだった。あいさつを交わした後で分かったのは、騒ぎにも気づかずにアルが眠りこけていた事実だった。リアの苛立ちは、その時点で頂点を迎えた。慌てて追いかけてくるのは食堂を出てから事情を説明したからだ。
だいたい、何もなくてよかったね、って何よ、それ!
自分自身理解できない憤激にリアは駆られていた。
そりゃ、あたしは単なる調制士であって恋人じゃないわよ。たとえどんなに近くにいたって調制士。だけど―。
リアは足を止めて後ろを振り返った。
「な、何?」
「何でもないわよ!」
前に向き直ると一層早足で歩き出した。アルのぎこちない反応にさらにムカつきが増していた。
だからって、こうも平気そうにしてるってのはどうなのよ! 仮にもお付きの調制士が襲われたっていうのに! しかも、異性種に! いや、異性種って決まったわけじゃないけど、でも、わざわざ寝室に忍び込んできたのよ!? 男性種に決まってるじゃない!
リアは襲撃者を男性種と決めつけていた。憶測以外の何物でもなかったが、リアにとっては真実だった。激情のままに前庭を目指した。