4-6 金色の長い髪の毛
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
火炎の煙と破壊による粉塵をものともせず、ヴァン・キ・ラーゴが寝室に突入した。リアも続いた。寝室に踏み入るのと同時に手を振って照明を灯す。しかし、ベッドの残骸の散らばる寝室には誰もいなかった。ヴァン・キ・ラーゴも立ちすくんでいる。
あそこか!
リアは寝室の窓が開いたままになっているのに気づいた。カーテンが乱れ、隙間に外の闇が見えた。
乱暴にカーテンを押し開けると窓の先のバルコニーに出た。隣り合うバルコニーに目を振り、誰もいないことを確認すると身を乗り出して下を覗き込んだ。庭は暗闇に沈み、何者の気配もしなかった。
逃がしたか…。
気落ちした気分をリアは味わった。三階を選んだのはこうした事態も想定したからだが、特異な能力を持つ魔族相手では気休めにしかならなかったようだ。襲撃者の姿すら確認できずでは腹の虫が収まらない。
険しい目で闇を見据え、身を翻そうとしたリアは手すりに添えた手の平の違和感に気づいた。細く、気をつけなければ見過ごしてしまいそうなほどの何かが幾本も手すりに巻きついている。指先でなぞり、目をこらして摘み上げたものをリアは月明かりにかざした。
これは…。
それは、金色の長い髪の毛だった。