4-4 忍び込む者
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
暗がりに沈んだ床が見える。レクチャーが始まった時から使い、既に馴染んだ部屋に足を踏み入れようとしたリアは違和感を覚えた。
「誰!?」
声を尖らせた。足は戸口で止まっている。部屋の空気がいつもと違う。確かな感覚だった。
誰何への返答はなかった。暗がりに物音は無く、違和感だけが消えない。
…誰かいる。それは間違いない。
部屋に漂うのは生き物の気配だった。獣ではなく、人だ。直感が告げていた。
いったい誰が、どういう理由で忍び込んだのか。王選びの最中に参加者が取る行動ではなかった。仮に参加者なら、目的を達したとしても資格を剥奪されかねない行為だ。それに、胞奇子や調制士の居場所は逐一把握されている。ここにいる人物は求法院のシステムを騙せるか、あるいは気にかけないほどの能力者だ。リアは緊張感を一気に高めた。
寝室の明かりは魔力に反応して点灯する。手を振ろうとした刹那、リアは何かが暗闇の奥から迫る気配を感じた。壁を盾にしつつ、居間の中に逃げた。
「―!」
背後で大きな破壊音が響いた。リアは衝撃と、履物による足の乱れのために床に転んだ。