4-2 夜着姿
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
視線の先には天井までの高さのある窓がある。長椅子は窓に向かい合っており、昼間なら求法院を取り巻く城壁が見える場所だった。窓からほのかな月の光が差し込んでいる。
時は夜半で、建物の外に灯りは点いていない。求法院の周囲に張り巡らされた相転儀のフィールドは昆虫や小動物の進入も防ぐが、森に生息する生き物をいたずらに刺激しないための配慮だった。
リアの装いは光沢のある乳白色の布でできた夜着だった。湯浴みの後だ。潤いが増し、飾りを取り去った紅い髪は夜着と同じ色の紐で一つにまとめていた。肩から体の前に下がって白い布に映えている。夜着はゆったりとした造りをしており、ストラップが胸元から続いているために襟ぐりが深く、腕と背中が露出していた。布地はウエストで絞られた後で足元まで伸びている。品良く投げ出した脚の一部が両側にある深いスリットから覗いていた。
…どうもこうもないわね。
リアは、たゆたう思考に区切りをつけると床に投げ出していた室内用のサンダルを履いて立ち上がった。こういう時は眠るに限る。夜のしじまは人の心を否定的な考えに導くものだ。答えがいつまでも出なかったり、同じ思考が何度も繰り返す場合には一眠りすると不思議と落ち着きを取り戻すことをリアは経験から知っていた。