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3-16 異名の由来
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
…何てやつ。確実に自分の運命を左右する相手を見た目で選ぶなんて。
信じられない思いがした。
「…異名のことは聞いてたわけね?」
気を取り直して訊いてみた。
「まあな。男に生まれていればうんぬんのところが初耳だっただけだ。必要なことしかしゃべらないんでね、こいつは」
「…まあ、そうでしょうね」
気が抜けたように肩を落とすと、リアは椅子を起こして座り直した。
アルが気軽な一言を洩らした。
「でも、どうして空姫なんて呼ばれてるの?」
瞬間、テーブルの空気が張り詰め、走って過ぎた。リアが鼻を鳴らした。
「どうせ、喜怒哀楽が少ないからでしょ」
ナヤカが頷いた。
「あ、そうなんだ」
アルは素直に納得したようだった。
確かにナヤカは美しい外見をしていた。そして、人形のように表情がなく、内奥に意思が感じられなかった。まさに空っぽな感じだ。異名の由来の一つとしては相応しかった。他の理由もリアは知っていたが、敢えて口にしなかった。