3-13 その欲望を信じましょ
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「いいわ。あなたじゃなく、美しいものを追い求めるその欲望を信じましょ」
「感謝する。改めて自己紹介だ。おれはギーツ・バルファイク、こいつはナヤカ・エジェイルだ。どっちも名前をそのまま呼んでくれ」
「ぼくはアルカシャ・クルグ。アルでいいよ」
「リーゼリア・バザム。…しょうがないから、リアでいいわ」
リアは不承不承という気配を隠さずに言った。
「せっかくの壮大なイベントだ。楽しくやろう。物事を楽しむのに過度の争いは無用だ」
ギーツが言うとナヤカが無言で袖を二度引いた。
「心配するな、ナヤカ。魔王になるのは、このおれだ」
ギーツは、ナヤカの手を両手で包み込むように握ると目を見つめた。
「魔王の座を譲る気がないってところも本当のようね」
「無論だ」
ギーツが笑う。ナヤカの手を開放して思いついたように言った。
「ちなみに、こいつはクランゼールの統主の娘で―」
ギーツの言葉を聞いた瞬間、リアの中で思考の断片がつながった。衝動的に立ち上がっていた。金属製の椅子が仕切りに倒れ込み、硬い音を立てた。