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3-12 偉大なものは美しい
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「申し出を了承するわ」
「ありがたい」
ギーツが大きく笑った。
「でも、いいの? アルに戦闘技術を教えると魔王の座が遠のくんじゃない?」
「そいつは仕方がないな。美しいものを追い求めないおれはおれじゃない。それに、たとえアルがどれほど力をつけたとしても魔王になる自信がおれにはある」
ギーツが言葉通りの笑みを浮かべた。リアは、初めてこの男に魔族の片鱗を見たような気がした。調制士としての反抗心が皮肉を口にした。
「あたしが承諾すれば、アルと友達になるんでしょ? 友人を蹴落とすことは、あなたの主義に反しないの?」
「それとこれとは話が別さ。友達になることと馴れ合うことは同じじゃない。ついでに言えば、自分の心を奪った者さえも乗り越えて頂点に立つおれは偉大だ。そして、偉大なものは美しい。そうは思わないか? リーゼリア・バザム」
リアは苦笑するしかなかった。よくも言ってのけるものだと思った。だが、リアの心の壁を取り払うには充分な言葉だった。