3-10 きらめいた何か
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「こっちのことは把握済みみたいね?」
「もちろんだとも。興味の対象を知ろうとするのは当然だろ? そうでなくてもおまえさんたちは有名人だがな」
「有名人? アルとあたしが?」
「そうさ。調制士の側からアプローチした上に、脅して胞奇子をゲットしたツワモノ、ってな。アルカシャ・クルグは、ぶん取られた獲物だな。ここにいる人間で知らないやつはいないんじゃないか?」
説明を聞いたリアは唇を捻じ曲げた。
あたしだって、やりたくてやったわけじゃないわよ! …仕方ないじゃない。アルのきらめきを見た瞬間、あたしの奥でも何かがきらめいたんだから。
心の中で誰へともなく言い訳をした。
あの時は事態が差し迫っていて他に方法がなかったのだ。どうしても短時間でアルを説き伏せる必要があった。悠長に自己紹介から始めている余裕などありはしなかったのだ。
アルに惹かれたことにも言葉で言い表せるような理由はなかった。属性の希少さや優劣は後で気づいた事柄に過ぎない。ドロスを弾き飛ばす場面を見た時には体が熱で満たされ、突き動かされるように走っていた。冷静になった今も判断を間違えたとは思っていなかった。静かな確信が胸の内にあった。アルが最も遅い到達者であろうと相転儀の素養に欠けていようと構いはしない。リアにとっては自分の直感こそが指針だった。
あんたたちだって似たようなモンでしょ!
喉の奥まで出かかった台詞をリアは飲み込んだ。どうにも分が悪そうだった。