3-9 適当に言ったら、当たり
長文なので分割してアップしてあります。
枝番のあるものは一つの文章です。
サブタイトルは便宜上付与しました。
「だけど、ぼくが求法院に着いたのって最終日だし」
気の高ぶりが去るとアルの声が耳に入った。話が進んで森の試練が話題になっている。
「そんなのは気にする必要はないだろう。おれも森を抜けたのは最終日の一日前だ」
リアは鼻を鳴らした。
「どうせあんたみたいな人間のことだから、森の様子でも眺めて『美しい』とか言ってて遅れたんでしょ?」
ギーツは感嘆の声をあげた。顔も輝いている。
「よく分かるな。ご明察だ。森の情景といい、動物や植物といい、一つ一つが実に美しかったぞ」
適当に言ったら、当たりかよ!
リアは心の中で舌打ちした。どうもこの男と話しているとやたらと気分がやさぐれる。ささくれた心情のままに言葉を継いだ。
「それで?」
ギーツが怪訝な顔をした。
「あなたは自分の求めるものに近づける。だけど、あたしたちは? あなたたちを受け入れても何のメリットもないわ。そうでしょ?」
「リア―」
「アルは黙ってて」
アルの抗議の声をリアは冷たくはねのけた。
「あたしもアルも友達を作るためにここに来たわけじゃない」
目はギーツを見据えたままだった。ギーツが口の端を大きく上げて笑った。
「いい仕事ぶりだな、リーゼリア・バザム。調制士はそのぐらいでないといけない」
ギーツの口調には気分を害した様子はなかった。