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2002年10月-2

2002年10月11日(金)

 大阪に着いた。

 心配していたバスでの旅行も、睡眠薬を飲んで寝ていたせいか、苦にならなかった。

 とてもすがすがしい気分で、大阪駅に降りたった。

(もうすぐアイツに会える。一番の親友に会えるんだ)

 そう思うと、居ても立ってもいられなかった。

 だからだろうか?電車に乗っても、大して気分が悪くならなかった。

 彼の家には彼と彼の彼女がいた。

 彼がバイトに行っている間、彼の彼女といろんな話をした。

 彼も実は悩んでいた事、彼も彼女も、いろいろトラブルを抱えていた事。

 そして、オレに会いたがっていた事。

 それは、オレのためだけでなく、Aのためでもあった事。

 嬉しかった。オレは、必要とされていた。

 心からそう感じる事が出来て、安らいだ。

 オレとアイツは、驚くほど良く似ているところがあって、それが、ある種のシンパシィとなって、オレの気持ちを楽にさせてくれる。

 夜に彼の彼女の家に行ったが、道中、電車で気分が悪くなった。

 例のホコリ臭い匂いがして、(ああ、ヤバイな)って思った。

 そんなオレを彼は気遣ってくれた。側にいてくれた。

(一人じゃないんだ。一人でがんばらなくていいんだ)

 そう感じた。とてもホッとした。

 駅には彼女の弟が迎えに来てくれていた。

「ずっと大阪におったらええやん」

 オレの病気を知ってか知らずか、そう誘ってくれた。

 素直に嬉しかった。オレは必要とされてるんだなって思った。

 彼の彼女の一家は陽気な人たちだ。

 でも、同時に人生のいろいろ辛い事をくぐり抜けてきた人たちだ。

「人生は、全部オッケーやで。どんなに辛い事があっても、それは自分の選んだことやし、その事が、絶対なんかの経験になるから。そやから、全部オッケー。全部オーライやで」

 そう、お袋さんが言っていた。含蓄のある言葉だと思った。

 そんな1日だったから、睡眠薬を使わないでも寝られるかと思ったけど、すんなり寝付くことが出来なくて、結局使った。



2002年10月12日(土)

 今日はしばらく1人でいる時間があって、その時例のホコリ臭い匂いがした。

 ちょっと怖かった。

 1人で留守番しているからどこにも行けないし、誰も助けにきてはくれない。

 だから心細かった。

 だから不安だった。

 でも、友達と合流してからはまた元気になれた。

 薬を飲むヒマがないほど、いろいろな事にオレを巻き込んでくれた。

 薬を毎回飲まなくても、なんとか元気でいられた。

 今日は疲れたのか、お酒のせいか、睡眠薬を使わないでも眠りにつけた。



2002年10月13日(日)

 大阪に来てから気分がいいのは、きっとここが日常から離れた場所だからだと思う。

 学校の事も、家の事も、就職の事も考えなくていい。

 僕はちょうど旅行者のような感覚で、ここにいる。

 ここに好きなだけいていいし、何かに強制される事もない。

 その事が、僕の心を落ち着かせる。

 今日も睡眠薬を使わなかった。

 毎日が本当に楽しい。



2002年10月16日(水)

 大阪から帰ってきて、その反動で体調が悪くなるかと思ったけど、今日はかなり気分が良かった。

 でも、やっぱり大阪に居たときのほうが楽だった気がする。

 自分の家は、落ち着けるけど、何かもの悲しい。

 だけど、大阪に行く前よりは全然楽になった。

 もちろん、学校の事や将来の事を考えると、また気分が悪くなる。

 でも、以前よりは楽になった。

 きっと、心の中で、(休んでもいいんだ)と確信したからだと思う。

 大阪に行って良かった。

 一番の親友に会って、良かった。



2002年10月17日(木)

 今日はひさびさにこの前とは別の大学の同級生と会った。

 ヤツはオレの事でいろいろ心配してくれていたらしい。

 素直に嬉しかった。

 まだ自分は必要とされてるんだと思った。

 まだまだ体調は悪いし、悩み事は沢山あるけど、今の自分の状態を人生における休息期間としてとらえることで、なんとか現実と折り合いをつけていけるような気がする。



2002年10月20日(日)

 最近、よく眠れる。

 と、言うよりも、眠くてしょうがない。

 以前のように熟睡できないのも問題だが、最近のように眠りすぎるのもどこかおかしいと思う。

 とりあえず、学校に行けるかどうか考えてみた。

 学校に行っている自分を想像してみた。

 ダメだった。

 やっぱり背中が熱くなって、イヤな汗が出て、目の前が暗くなった。

 やっぱりダメだ、と思った。

 少し、悲しく思った。

 とりあえず、ムリはしないで、ゆっくり考えていこうと思う。

 できることだけ、やっていこう。




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